なにやら通な人々の間で妙に評価が高い作品らしいというのを 聞きつけ、やってみました。 が、ほとんどコメント不可能。 どうしていいのかよくわかりません。 とりあえず好きな人はすごく好きだというのは納得できます。
片田舎で燈台守をする主人公と、なぜか一緒に暮らす少女のお話、 とここまでしか言えません。これ以上を語れば即ネタバレになってしまいます。 とりあえず言えるのは、 何回か読まないとストーリーはまるでわからないということと、 3回目で度肝を抜かれるだろうということくらいでしょうか。 加えて、最後のエンディングを見ても「何がどうなってこうなった」 という意味でのストーリーはわかりません。 「何を表現したかったか、何がテーマだったか」はわかりますが、 そういうのだけで満足してしまえない人は多いでしょう。
そういうわけなので、話は難解です。物事が複雑なのではなく、 物事の意味がわからないタイプの難解さです。 「他人を理解することは不可能である」ということとどう向きあうかというのが テーマだと言うことくらいは言ってもいいでしょうか。 しかし、そのへんのテーマはともかくとして 3回目、4回目の展開のものすごさには十分度肝を抜かれるので、 それだけでもけっこう楽しめるかもしれません。
人間として描かれているのは主役だけです。 いっしょにいるメルンにはどうにも人格に深みが感じられません。 もっともテーマを考えると意図的なのではないかとも思えるので 問題にはならないでしょう。そういう意味でこれはギャルゲー (女の子の魅力をウリにするゲーム、の意)でなくあくまでエロゲーなのです。 描写はあくまで「ステレオタイプ」の域にとどまっています。
一方主人公の心理はかなり丁寧に描写されています。 それがウリなのですから当然ですが、 理知的な文章で、哲学用語や哲学的な手続きをふみながら 思考をたどっていくのはこの手のものとしては異端でしょう。 ただ、私の印象としては理の力が勝りすぎています。 ゴリゴリと理屈で書かれた文章で、 にじみ出る魅力のようなものがありません。 神経質で理屈くさい印象を感じます。 というわけで、知的にはおもしろいと思いますが、 情感に訴えるものはありませんでした。
知的です。頭の悪い文章とは一線を画します。 そこら中に教養が満ちあふれた文章で、 フランス文学の翻訳みたいな印象をうけます(偏見含む)。 こういうのはめったにあるものではないので、 かなり新鮮でした。 地名や人名がフランスだというだけでも、 趣きがずいぶん違います。 なにやら「それっぽい」雰囲気の文章ということで 高く買いたいところです。が、私に受けとるだけの教養がないから 「それっぽい」としか感じられないということも当然あるでしょう。 もう少し頭を使って真面目に読めばもう少し心を揺さぶられたのかもしれません。
選択肢つき小説です。 エンディングに行くとあらたに選択肢が出て他の展開を読めるようになります。 これによって読む順番はだいたい定められており、 5つのシナリオを順に読むことでストーリーの全貌がわかるようになっています。 テーマや形式からいって、これは妥当なものといえるでしょう。
なお、プログラムに関してですが、読み返しができないことと、 スキップ中も描画のウエイトがなくならないので重いという弱点を除けば まあ合格点でしょうか。ヴィジュアルアーツのゲームはみなこのプログラムを 使っており、KANONや好き好き大好きも同様です。 しかしそろそろ機能拡張してくれてもいいと思うのですが。
なんでしょう。この絵は。うまい人ではないでしょうが、 変わった絵であることは長所かもしれません。 なんにせよ好みにあうかどうかが問題でしょう。
なお、塗りはまあ標準レベルといえます。 主人公の皮膚の色合いがちょっと死んでいる気がしますが、 そういうのはどうでもいい事柄と言えるでしょうし。
なお、枚数が少ないのが気になります。 せっかくこういうメディアなのですから、 文章で書いてしまう前に絵でも表現してほしいところです。 絵と文章で役割分担というものがあってもいいと思います。
普通といえば普通です。こびりつくほどではないけれども、 なんだこりゃと思うこともない。よくできているという評価が妥当でしょうか。
なお、メルンその他の声は「不満はない」というレベルです。 下手ということはないでしょうが、なにぶん口調その他がステレオタイプなので あまり注意して聞く気にならなかったということもあります。 少くとも下手で困ることはないでしょう。
これもアリかとは思いますが、 これをエロゲーでやってよかったのかよくわかりません。 3回目以降怒涛のようにSM描写がされますが、 根本テーマを描く上でそれが本当に必要かどうかはよくわかりませんし、 私にとってはジャマでイヤなものでしかありませんでした。 もちろん作る側のさしせまった事情というものはあり、 鬼畜エロシーンで客を呼びつつ自分の表現したいテーマを出すということも 仕方ないことなのでしょう。他の鬼畜物との差別化のために こういうテーマを導入したと考えるのは無理があるほどの とんがり方だからです。 もっとも逆に言えば これだけとんがりつつも鬼畜エロシーンをあるレベルで提供しようとするあたりが プロらしさなのかもしれません。
しかし結局のところ、 私としては知的にはおもしろかった、つまり興味深かったけれども わくわくしたり、しみじみしたり、ゲラゲラ笑ったりという情緒的な おもしろさはあまり感じませんでした。 もっと深く考えて、主人公の心理に入りこんでいけば 知的という印象を通りこした重みをもって迫ってくるのかもしれませんが、 私にはそこまでの動機がなかったのです。 もっとも、私が鬼畜系が嫌いだ ということが大きく評価に影響しているとは思います。