なんとなくどこかで名前を聞いた気がしたので、やってみました。 普通な恋愛話ですが、微妙にいいところがあったりします。
いきなり恋人が事故死。ここから始まるのが特徴です。 メインだと思っていた娘がいきなり死んで その後まるで出てこないというあたり度肝を抜く展開です。 他の娘にホレていく自分に気づいて、亡き恋人への義理との間で苦しむのが メインというのはなかなかおもしろいコンセプトでしょう。
が、シナリオには見事にヒネりがありません。 典型的にわかりやすい経過を辿りますし、 山場イベントの内容も、起こるタイミングも読めてしまいます。 というわけで、話そのものの出来に関しては残念ながらいいとは言えません。 一応シナリオのあらすじを箇条書きにしてみましょう。
ちょっとそれっぽくしすぎましたが、こんなです。 はっきり言ってヒネりもなにもあったもんじゃありません。 しかし、これの特徴は筋のおもしろさよりも、心理描写の丁寧さにこそあるので、 これはそれほど問題ではないとは言えます。 ただ、筋がおもしろければよりいいのは確かなのです。 もう少し伏線などの技巧が凝らされていればよかったのにと思います。
ところで、第三のシナリオのHシーンは最悪です。 犯罪です。第二のもけっこうダメっぽいです。 やっぱりHシーンが無理矢理すぎます。 このストレートな感性とエロはどうにもなじまなかったのだということでしょう。
ストレートにキャラクターの思うことを書いてしまっています。 これは長所でもあり、短所でもあるでしょう。 素直で善良な感性なのでとても好感がもてる一方、 ヒネリもなくクサいことを言いすぎるので多少食傷気味にもなります。 伏線などのストーリー作法と合わせて、 もう少し表現技巧を学んでほしいところでしょう。 そうすればこのストレートさや、善良で繊細なセンスが もっと人に訴えかける力になると思います。
また、女の子側はともかくとして、主人公が女の子にホレていく過程の描写が 丁寧なのに好感がもてます。「あ、君オレのこと好きなの?」みたいな 一方通行さがありません。もっとも女の子の方が主人公にホレる過程が まるで描かれていないのでそちらでは落第なのですが。
大和撫子まる出しな従姉妹(妹属性。呼称はお兄さま)、 顔が死んだ恋人にそっくりな無口転校生、病弱ガキ、の3人がヒロインです。 それに加えてシナリオはありませんが死んだ恋人の形見の人形と、 クラスメートの眼鏡女がいます。
で、やはりこの作品でも脇役の方が立っています。 ヒロイン達は属性通りに典型なうえに、 どう主人公に魅かれていくのかの描写がない ためにかなり都合がいい存在になっているのです。 三番目の病弱ガキの場合など、彼女との恋愛の話というよりは、 主人公が彼女の存在によって未来へと歩む決心をするというお話で、 悪く言えばダシでしかありません。確かに悲しいお話ではありますが、 人が死ねばどうやっても悲しくなるのです。というわけで、彼女らは 残念ながらそう魅力的とは言えません。しかし、眼鏡女だけは自然にいい奴です。 確かになにかとクサくストレートなことを言うことも多いですが、 他のキャラに比べればはるかにマシですし、 描写ははるかにしっかりしています。 そしてなにより自然です。 無理にギャルゲーにしたような印象を受けません。 この路線で描けばみな魅力的なキャラになるのにと残念に思いますが、 それではギャルゲーにならないのもまた事実。 むつかしいものです。
なお、男性脇役キャラもいい感じです。 といっても主人公の親友ただ一人なのですが、 こいつがまたいい奴なのです。 前述の眼鏡女ととても気持ちのいい漫才をしてくれます。 義侠心あふれるさわやかな男です。 設定上女にモテモテなのですが、実際にこんな奴がいて顔がよければ さぞやモテることでしょう。
そして主人公ですが、こいつがまたいつまでも悩む真面目で善良で まっすぐな少年なのです。ここまで潔癖だと見ていて殴りたくなりますが、 それが妙に自然なのでなんとなく許してやりたくなります。 モノローグがシナリオの圧力をうけてクサく、長く、都合よくなっているあたりが 気になりはしますが、このストレートさは結構好きです。
選択肢つき文章です。特に不満はありません。 いろいろ設定もできるので十分及第点でしょう。 ショートカットキーも充実していますし、 自動再生、読んだものみ飛ばす、読んでないものも飛ばすなどなど機能が ついているのは好感がもてます。 これほどちゃんと作られているものは非常に少ないので、 是非他のメーカも見習ってほしいものです。
普通にきれいです。それ以上特にコメントのしようがないほど普通なのです。 絵としてはかわいいので特に問題はないでしょう。
なお、声はあんまりうまくありません。 しかし、それほど気になることもないでしょう。
基本的には恋人が死んだ後の亡霊入り三角関係を テーマとして描かれているものなのですが、 やはりひねりがなさすぎたのが最大の欠点でしょう。 しかしながらストレートな感性には好感がもてますし、脇役の会話は なかなか魅力的です。けっこう楽しめました。