食い物日記0012

2000年12月17日

しゃぶしゃぶについて書こうと思う。 生まれて始めて食った料理なのだが、おそらく何かが違う。 というのも、肉のエキスをお湯に逃がしたぬけがらを食う料理だからだ。 肉が薄いのであというまに味が抜けるし、 ゆですぎれば固くなって味もなくなる。 脂身の多い肉はゆですぎてもやわらかいが、 その分脂っこくて味もない。 霜降りとかいって脂の多い肉が珍重されるのは要は 加熱しすぎても固くならないというだけのことであって、味そのものが おいしいわけではない。固くなるのは加熱がすぎるからであって、肉がショボいから ではないのだ。というわけで、しゃぶしゃぶはタダで食わせてもらうなら 文句はないが、 自分で金を払うのならば避けるべき料理だろう。 すきやき、しゃぶしゃぶの二大間違い料理はオレは自分では作らない。 なお、牛丼もすきやきの一種である。 前に故あっていろいろと牛丼をおいしく作る方法を模索したが、 ついに完成させることができなかった。

肉でも魚でも野菜でも、長時間煮込めばそれそのものの味は消えてなくなる。 長時間煮るのは汁に味を出させるのが目的であって、 肉本体や魚本体はぬけがらにすぎなくなるのである。 だから、本来シチューを作る時にはダシ用の材料で十分に煮た後、 具をわずかな時間火が通るまで煮て完成する。具を入れた後しつこく煮つづければ 汁はおいしくなるが具の味は失われてしまうのだ。 さて、これは牛丼やすきやき、鍋料理などにも 言える。たとえばおいしい牛丼を作ろうとするならば、十分にダシの出た汁で わずかな時間だけ肉を煮なければならない。 よって、かつお、こんぶ等の濃い目のダシによく炒めた玉葱を加えて甘味を出し、 醤油と酒で調味した後に ゆがく程度に牛肉を煮てすぐに供すると、そこそこはおいしくなる。 しかし、残念ながらこれは簡単ではない。 熱い汁の中に薄い牛肉が入っていれば例え火を止めたにしても だんだんと味は抜けてゆくし、肉も固くなってしまう。 固くならないようにと脂身の多い肉を使っても、味が抜けることは変わらないし、 脂が多すぎて食感が重くなる。 そこで肉を厚くし、一度表面を焼いて味が抜けにくくしてから 入れるのが良いのだが、これはもはや牛丼ではない。 つまり、理屈の上から行けば牛丼を完成された料理にするのは無理っぽいのだ。 大人しく牛丼屋でジャンクなものを食う程度で満足しろと言うことだろう。

なお、牛丼屋は全てジャンクであるという結論が出た。すきや、なかう、まつや、 よしのや。この4店についてはどれもケミカルである。 砂糖とグルタミン酸ナトリウムの量でジャンク度をはかるのが良いと思うのだが、 どれも丙丁つけがたいジャンク度である。以前は松屋が比較的まともだったのだが、 最近食った時は見るも無惨なほどジャンクであった。 前食った時の印象が間違っていたのか、味が落ちたのかは定かではない。 結局、牛丼は食うべきではないという結論に落ちついた。

また、ラーメン屋であるが、これも今のところジャンク度の平均は相当に高い。 たいがいのラーメン屋はあの舌がスっとする感覚を覚えるほどの グルタミン酸ナトリウムを入れている。これは二郎や天一も例外ではないのだ。 今まで何軒を調査したかわからないほどだが、これだけ食って まともなものがほとんどないとするならば ラーメンも食うべき料理ではないという結論を出さざるを得ない。 ただし天一と二郎は別の付加価値がつくので保留とする。

2000年12月13日

スーパーでタコ。鮮度によってどれくらい味が違うのかを確認するためである。 あからさまに鮮度が悪く、どうにも買う気がしないが実験のためだ。 そして帰ってゆでて見ると、感動的なほどマズかった。前東京で食った奴は 固くで食えなかったというのはともかくとして味は完璧だったのだ。 ふくよかな甘味が広がり、イヤな臭いなど微塵もしなかったのである。 だがこいつはくせえ。臭いがヤバい。味もスカスカ。 同じ種類かどうかすら疑わしい差である。 というわけで、近いうちに口直しをせねばなるまい。

2000年12月9日

8日の東京での鍋について語ろうと思う。 材料はタラ、そしてタコ。タラは当然鍋であり、タコは当然ゆでて刺身だ。 だがたったこれだけのことが完膚なきまでに失敗したのである。

想定していた手順はこうだ。タラのうろこを落とす。バラす。 鍋で煮つつ、煮えたはしからみんなで食う。 タコは塩でもんで 2分ゆで、切る。食う。これだけである。 だが、実際にはこう簡単にはいかなかった。

まず、調理用具の問題があった。 コミュニティーセンターを借りたので台所用品は一式揃ってはいるのだが、 いかんせん家庭用である。とてもではないがこのスケールの料理に使える レベルではない。 鍋もただの金属鍋で小さく、2つ使っても一度に全部が入らないという状態だったのだ。 次に、加熱しながら食うためのカセットコンロがなかった。 コンロで煮えるまで煮てから食卓へ運ぶという状態で、 当然濁るし、全体的に煮えすぎになる。 待ち時間も長い。第三に、これが一番重要なのだが、白子が多すぎた。 あんな猛烈にしつこいものが6.9Kgのタラの中に2kg近く入っていたのである。 身の量そのものは前買った5kgのとほとんど変わらず、 白子過剰で身が足りないという悲惨な状態になった。 その白子を一度に鍋にブチこんでしまったのが浅はかで、 それだけでみんなグロッキー。 加えて、そのまま白子を回収せずに次の段階に進んでしまったために、 汁が完全に白子汁。白子の味が強すぎてもう何がなんだかわからない。 淡白なはずのタラ鍋が豚骨ラーメンも真っ青な濃厚シチューになってしまったのだ。 当然そうそう食えない。だが、これでもタコの刺身がうまく行っていれば まだどうにかったのだ。しかし無情にもタコもまた食える代物にはならなかった。 まず鍋が小さく、タコ投入とともに温度が下がってしまって、2分ゆでただけでは まるで火が通らなかったのである。 そして鮮度が良かったのがこの失敗をさらに 重大なものにしたわけで、 あんまりにもプリプリしていてまるでかみ切れない。 なにせ数時間前まで生きていたのだから無理もない。 切り方が大雑把すぎたこともあって、過剰な歯ごたえは半ば殺人的だ。 やむを得ず炒めて火を余計に通してみたのだが、 今度は普通に固くなってしまって、やはりかみ切れない。 そうして半分くらい残るという結果になってしまった。

惨敗である。最大の失敗は、タラの白子量を甘く見すぎていたこと。 次に大きな失敗はコミュニティーセンターの調理用具に期待しすぎたこと。 次点として、タコを大きく切りすぎたことも書いておくべきだろう。 これで思い知ったのは、タラはリスキーな魚なのだということと、 調理用具は自分で持っていかねばダメだということである。 加えて鮮度のいいタコは小さく切ろうという教訓も得た。 いっそ皮をはいで中身をゆでずに刺身、という方がよかっただろう。 まわりはゆでて食えばいい。

そしてなによりも、もうタラはいい。生で食うのが一番失敗しないのだ。 2〜3キロ級の魚を山と買ってかたっぱしから刺身にする方がはるかに良い。 鍋は食べ方をコントロールするのも至難だし、 タラやアンコウと言った魚は果たしておいしいかと言われると いまひとつ微妙な気もしないでもない。 刺身、焼く、和える、くらいが一番確実でしかもおいしいと思う。

2000年12月7日

強烈な栄養を誇る食い物をまた発見した。ひじきとのりだ。 ひじきはカルシウム、のりはカロチンが強烈である。 こいつらも安く調達できるようなら備蓄に加えよう。 どちらも今の状態では不足気味なので、非常によろしい。

2000年12月6日

メシ8合炊いたんだが、どうするんだこれ。 冷凍決定。 一部弁当。

横浜行きに備えて包丁を砥ぐ。前の学園祭鍋で相当刃こぼれしたので、 直すのにも手間がかかった。もっとも完全には直していない。 特に大きいはこぼれがいくつかあり、それが消えるまで砥ぐのが あまりに面倒だったためである。気をつけて使えば 小さいはこぼれしかできないだろうから、砥ぐ度に 大きいのも消えていくだろう。そもそも荒砥を使わねばならんような 刃こぼれをする段階で腕が未熟である。中砥数回で 元に戻るくらいの損傷しか起こさせない腕に達しなければ ダメだ。圧力でなく摩擦によって切るように心がけよう。 荒っぽい仕事は中華包丁。 ああ、そういえば仕上げ用の細い砥石を買おう。 外見がいまひとつ美しくないし、切れ味もより鋭くなる。 ピカール(研磨剤)で磨いてもいいが、それは無意味だ。

2000年12月5日

耐え切れなくなって、買い物。ほうれんそう128円と干しがき98円。 冬といえばやはり干しがきだ。そしてほうれんそうはやはりおいしい。 調理法は至って簡単。デカい鍋に湯をわかし、 ひと株づつ10秒だけゆでて、即座に水で瞬間的に冷やして軽く水を切る。 いっぺんにたくさんいれると湯の温度が下がってダメになるし、 水に長い間さらすと味が飛ぶし、しぼったりすると栄養が全部さようならする。 切ってからゆでるなど論外である。 簡単な一方で実に繊細な料理なのだ。これに極微量の醤油をかけてそのまま食う。 もちろん根っこごとだ。これがうまい。甘い。最高である。 なお、チンゲンサイ、小松菜なども同じ料理法でいける。 また、蒸しても良い。ただほうれんそうの場合はシュウ酸がキツいので、 蒸すよりはこうやって一瞬湯をくぐらせる方がおいしく食べられると思う。 ビタミンA、そしてC。

なお、ビタミンCの補充は基本的に手製はちみつレモンで行っている。 濃縮レモン果汁にはちみつを入れ、湯でといて飲むだけだ。 その日の気分に応じて酸味や甘味を調整できるのも良い。

2000年12月3日

玄米、大豆、椎茸、昆布。おいしい。 ああ、麦が欲しい。加工してない発芽する麦は売ってないのか。 冬のうちは発芽は少々キツいが、あたたかくなればすぐ発芽するようになる。 玄米も大豆も発芽するとビタミンCやらができてきて甘くなり、よりおいしい。 これに足りない栄養素はビタミンA、C、カルシウムくらいだが、 足りないといっても皆無なわけではないので欠乏症に至るほどではない。 万全を期してほうれんそう、こまつな、しゅんぎく、チンゲンサイ、ターサイ といった強力な野菜をできるだけ食うようにし、 牛乳を常食すれば本当に栄養が足りてしまう。 菜食主義者ってそう悪くないかも。ヨガヨガ。

この料理を金がない時の最終手段として採用。 一つの鍋でできてしまうし、炊くたびに材料を水につけて次の用意をしておけば 面倒もない。材料の比率は、玄米2、大麦1、大豆1、昆布てきとう、干椎茸てきとう。 干椎茸と昆布は何かにつつんで叩いて粉砕。これで切る手間もない。 水加減は、玄米2合につき水6合。若干の醤油で香りをつけると良い。 あんまりたくさん昆布や干椎茸を入れた時には てきとうに水も増やす。沸騰後弱火にして40分で食える。 なんて楽でおいしくて栄養まみれな料理だろう。 弁当箱につめて持っていけば研究室でも困らない。

金、時間がなくなった時に用いる最終料理の条件とは、

  1. 楽であること
  2. おかずなしでいけること
  3. おいしいこと
  4. それだけで栄養がそこそことれること
  5. 持っていけること
  6. 月単位での室温保存ができる材料のみ用いること
  7. 安いこと

である。これらがいいかんじなバランスで満たされたのが 今回の混ぜごはんだ。ミューズリーも悪くはないが、ビタミンA、Cとカルシウムが 圧倒的に不足している。それに牛乳を買いにいくのが面倒だ。 発芽スタンバイに時間がかかるが、最悪でも一晩つけてあれば炊くことはできる。 あとは大豆を小粒なものにし、どうにかして発芽する麦を買う手段を見つければ 完璧なものになる。ちなみに、 豆のすずき で小粒大豆をキロ500円で販売している。

2000年12月2日

金がない。麦もない。酒もない。かつおぶしもない。 非常事態なので、月末までは米と豆で行く予定。 米3合と豆1合を水につけて一晩置き、水を切ってザルに置いて さらに一日待つ。これによって内部でビタミンの生産が開始され、 栄養豊富になると同時にでんぷんが分解されてやわらかくなる。 その後干ししいたけ、こんぶ、醤油少々を足して炊く。 いきなり加熱するのはこんぶもしいたけも味が落ちるのでよくないのだが、 面倒くさいのでこの際仕方ない。 炊けたらしいたけとこんぶをサルベージして、細かく切ってから メシに戻せば立派な炊きこみごはんだ。


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